従業員が過労死、パワハラを受けていたなどのニュースが頻繁に報道されるようになっています。
これは、企業のブラック化によるものなのですが、そもそもブラック企業という言葉にはさまざまな意味が含まれており、曖昧な部分もあります。
企業のブラックとは一体何なのか、説明していきたいと思います。
ブラック企業とは
ブラック企業とは、暴力団などの反社会団体とのつながりをもち、違法行為を繰り返す会社だとしています。
しかし、近年ではそれに加えて、労働法を無視、または穴を悪用して従業員に労働を強要する会社を指します。
今、私たちの生活で問題になっているのは後者の方でしょう。
ブラック企業とする一般的な判断基準
企業に対してブラックだと判断するのには、さまざまな理由があります。
- 労働時間が長い
- 給料が少ない
- 休みが無い
- 暴言や暴力がある
- 残業手当が出ない
- その他
人によって判断が分かれるのですが、それをすべてブラックというには曖昧すぎるのではないでしょうか。
労働法を簡単に解説
簡単にではありますが、労働法では以下のように定められています。
- 試用期間は14日以内でなければならない。
- 最低賃金は各都道府県ごとに決められた金額に準ずる。
- 1日の就労時間を8時間以内、1週間で40時間以内とする。
- 残業をする場合、1ヶ月なら45時間、1年なら360時間までを上限とする。
- 最低でも週に1日は休日とする。
- 変動労働時間制を採用し、定められた就労時間内で収まれば、1日あたりの長時間労働を許可する。
- パワハラ・セクハラの禁止。
この他にも細かく定められていますが、上記が労働法の主な内容となります。
最近の事件を例とする
最近ニュースで取り上げられた事件を例として挙げてみましょう。
勤務途中で交通事故によって会社員の男性が死亡した事件がありました。
長時間労働が原因とされ、遺族は会社に損害賠償を求める訴訟を起こしたとあります。
その男性は、東京都世田谷区にある「グリーンディスプレイ」という会社に勤めていたのですが、その企業の勤務環境は以下のようになっていました。
- 「正社員募集・試用期間無し」の求人だったがアルバイトで採用され、半年後に正社員となった。
- 採用当初のアルバイトから、残業時間は月100時間、多い時で月130時間を超えていた。
- パワハラと思われる発言を受けていた
- 休みは週に1度
- 深夜早朝に及ぶ不規則な長時間労働
完全に労働法を無視した内容になっています。
先ほど挙げたブラック企業の判断基準に当てはめると、ブラック企業であるといえるでしょう。
事件を労働法に照らし合わせる
この事件を労働法の観点から見てみましょう。
まず、「正社員募集・試用期間なし」の記載ですが、そもそも虚偽の広告ですので労働法ではなく職安法に違反しています。
また、虚偽の広告をしていなかったとしても、試用期間が14日を超えているため、労働法違反です。
労働法の残業時間である1ヶ月45時間を倍以上に超えていますので、労働法違反です。
パワハラについては、内容がどの程度のものかにもよりますが、本人がパワハラだと認識しているため労働法違反になります。
休日についてですが、週に1度の最低基準を満たしているため、問題ありません。
不規則な長時間労働も同じく、1ヶ月の労働時間が労働法の就労時間、残業時間内に収まっていれば問題ありません。
上記から、この企業は労働法を大きく違反していると言えます。
なぜ労働法を守らないのか
現代社会の問題である労働法違反ですが、なぜ守らない企業が多いのでしょうか?
ひとつは、経営者が労働法自体をほとんど知らないということがあります。
この場合、労務士や税理士に指摘されると素直に改善することが多いそうで、あまり問題にならないようです。
もうひとつは、知っていて違反しているということです。
違反すると30万円以下の罰金が科せられるのですが、科せられたとしても30万円で済んでしまうことと、そもそも刑罰が科せられないことが多いという実情があります。
そうなると、労働法を守らないほうが会社にとって経済的なメリットが大きいのです。
このような実態から、企業のブラック化は進む一方なのです。
企業のブラック化が止まるためには
企業のブラック化が止まるためには、すべての企業が労働法を守る必要があります。
ブラック化のそもそもの原因は、低価格競争にあり、低価格競争を勝ち残るにはコストを無理やり下げる必要があります。
一つの企業が労働法を無視して低価格にすると、他の企業も労働法を無視しなければ戦えない状況になってしまいます。
その悪循環によって、企業のブラック化は進んでいくのです。
そこで、労働法の罰則をもっと重くすることによって改善されるのではないかとされています。
現に、パートタイム労働法の改正が行われたりしています。
企業のブラック化を止めるための法改正も、これから行われていくことでしょう。
終わりに
ブラック企業は一部のものだけでなく、私たちの身近にも数多く存在しています。
もしかしたら、あなたがこれから勤める企業もブラック企業かもしれません。
劣悪な労働環境に身をおく必要はありません。
自分の身を守ることを一番に優先する行動をしましょう。
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