サラダ油やキャノーラ油は危険だという認識が広がっています。
結論から言うと安全です。
とはいえ、油の使い過ぎは健康に悪影響を及ぼすことがあります。
なぜ危険だといわれるようになったのか、そもそもどういう違いがあるか、そのあたりについて解説していきます。
2種類の食用油
食用油は大きく2つあり、
- バターなどの動物性油
- サラダ油などの植物性油
に分けられます。
今回はタイトルにある通り、サラダ油とキャノーラ油をテーマにしているので、植物性油に焦点を当てて解説していきます。
植物性油の種類
植物性油にはさまざまな種類があります。
代表的なものを挙げると、
- サラダ油
- キャノーラ油
- ごま油
- オリーブオイル
他にも、こめ油やひまわり油など種類が豊富です。
基本的に、油の名前には原料の名前が使われているため、どの油がどの原料からできているかすぐわかるようになっています。
しかし、この中でひときわ目立つのが、サラダ油とキャノーラ油です。
この2つの油はどんな違いがあるのか調べてみました。
サラダ油とキャノーラ油の違い
サラダ油とキャノーラ油には、以下のような違いがありました。
- 原料
- 用途
- 区分
これらについて、一つずつ解説していきます。
原料
カナダで生産されている菜種のことをキャノーラ(又はカノーラ:Canola)と呼んでいます。
つまり、キャノーラ油は菜種油のことです。
それに対し、サラダ油はJAS(日本農林規格)による以下の条件を満たして初めてサラダ油を名乗ることができます。
- 特定の原料
- 低温で凝固しない
- 認定された工場での生産
もう少し深堀りしていきます。
特定の原料
特定の原料を列挙すると、
- アブラナ
- ワタ(綿)
- 大豆
- ごま
- サフラワー(紅花)
- ひまわり
- とうもろこし
- 米(米ぬか)
- 落花生
以上の9種類となります。
原料が多いため、同じサラダ油という名前でも性質が全く違うことがあります。
また、JASの範囲内であれば調合油でもサラダ油を名乗ることもできます。
低温で凝固しない
油は低い温度になると、結晶化(凝固)が始まります。
JASでは、
と定められています。
この条件により、冷たい野菜を使ったサラダに使っても、ざらつきのない美味しいサラダを味わうことができるのです。
ちなみに、アメリカの規格であるAOCS(米国油化学会)でも同じ条件が定められています。
認定された工場での生産
JASの認定が必要ということから、一定の安全性を確保できます。
一定の安全性を具体的に挙げると、上記に加え、
- 品質の均一化
- 食品添加物の制限
- 残留農薬の規制
の基準を満たす必要があります。
以上の厳しい制限や規制から、高い安全性を確保できます。
その安全性を確保できているもののみ、サラダ油を名乗ることができるのです。
用途
サラダ油には明確な用途があるのですが、キャノーラ油には明確な用途がありません。
サラダ油は、サラダを食べるために使用される油です。
ドレッシングやマヨネーズなどに加工し、使用することを前提としています。
それに対し、キャノーラ油は加熱調理に向いているとされています。
しかし、キャノーラ油自体は熱に強いというわけではありません。
キャノーラ油を加熱用にしよう
ということです。
加熱用の油であれば、バターやラード、オリーブオイルが適しています。
理由は後述します。
区分
キャノーラ油とサラダ油は、区分すると横並びになる関係ではありません。
また、キャノーラ油でなくても、JASの指定原料であればサラダ油と名乗ることができます。
言葉では難しいので、この図を見るとわかりやすいです。
このような関係となっております。
以上がサラダ油とキャノーラ油の違いになります。
ちなみに余談ですが、サラダ油は日本固有の名称でもあります。
サラダ油・キャノーラ油の危険性
ここでタイトル回収に入ります。
改めて言いますが、
サラダ油・キャノーラ油は危険ではありません。
特にJAS認定を受けている商品はむしろ安全といえます。
では、なぜ危険だと言われるようになってしまったのでしょうか。
原因
サラダ油・キャノーラ油が危険といわれるようになった原因を3つほど挙げてみます。
- 加工による危険性
- リノール酸による危険性
- 抽出方法による危険性
ひとつずつ解説していきます。
加工による危険性
マーガリンなど、植物性油を加工した製品はトランス脂肪酸を多く含んでおり、トランス脂肪酸が原因で血中コレステロール値が高くなります。
その結果、
- 狭心症
- 心筋梗塞
などの冠動脈性心疾患(CHD)にかかりやすくなります。
原料が植物油であるため、その代表例であるサラダ油やキャノーラ油が危険という判断をされているのです。
特に、賞味期限切れの古い油や、加熱し使いまわして酸化した油はトランス脂肪酸が増えます。
つまり、油を使いまわすことなく、新しい油を使うことでトランス脂肪酸の過剰摂取を防ぐことができるのです。
リノール酸による危険性
サラダ油・キャノーラ油には、リノール酸という成分が多く含まれています。
そのリノール酸自体は私たちに必要な栄養素となります。
しかし、このリノール酸は加熱されると、ヒドロキシノネナールという物質を生み出してしまいます。
そのヒドロキシノネナールは強い神経性の毒を持っており、特に脳に悪影響を与えます。
その結果、
- もの忘れ
- アルツハイマー病
- うつ病
になってしまう可能性があります。
また、加熱せずともリノール酸の過剰に摂ることで、
- 心血管疾患
- 冠動脈疾患
のリスクが増え、すべての死因による死亡リスクが高まる可能性があると言われています。
心配になるような内容になりましたが、いつも揚げ物や加工品を食べているような過剰摂取をしないかぎり、リスクは限りなく低いです。
たまに量が増えたり週に1,2日揚げ物を食べたりする程度では大して影響はありません。
それでもリノール酸が気になるという方は、
- バター
- ラード
- オリーブオイル
を使うようにしてみてください。
これらはリノール酸がより少ないため、リスクはさらに低くなります。
揚げ物のように一度に多くの油を使う場合、オリーブオイルが最もコスパが良いです。
また、
- えごま油
- あまに油
- 魚油
などにはリノレン酸という必須脂肪酸(体の中で作れない栄養素)が多く含まれており、
- 成人病予防
- アレルギーの予防
- アトピーの予防
- 脳の活性化
の効果があると言われています。
とにかく健康を重視したいという方にはこちらの油がおすすめです。
しかし、デメリットとしては他の油に比べて流通量が少ないため値段が高いです。
逆に、
- 紅花(サフラワー)油
- ひまわり油
- グレープシードオイル
- 大豆油
はリノール酸が特に多く含まれているため注意が必要です。
とはいえ、その製品の成分比率にもよるため、気になる方はよく調べてから購入するようにしましょう。
抽出方法による危険性
なたねやごまなどの原料から油を抽出する方法は2通りあります。
- 低温圧搾法(コールドプレス)
- 高温圧搾法
- 溶剤抽出法
このうち、溶剤抽出法の工程から危険性があると認識されるようになりました。
低温圧搾法(コールドプレス)
低温圧搾法とは、原料に圧力をかけて搾ることで油を抽出する方法です。
仕組みは簡単なのですが、他の溶剤抽出法に比べて抽出量が少なく、効率が悪いです。
しかし、成分の変化を防ぐことができるため、高い品質を求める場合にはこの方法が採用されます。
高温圧搾法
高温圧搾法は、熱を加えた状態で圧力をかけて絞る方法です。
低温圧搾法に比べて、油の抽出効率は高くなります。
しかし、熱を加えるため成分が変化しやすく、結果として品質が落ちやすくなります。
溶剤抽出法
見るからに危険そうな名前がしていますが、まったくの誤解で安全な抽出方法です。
溶剤抽出法とは、こちらも文字通り溶剤を使用して油を抽出します。
有機溶剤であるノルマヘキサンを使用することで、高い効率性の抽出が可能となります。
使用したノルマヘキサンは、精製する工程で除去されます。
しかし、そのノルマヘキサンの一部が除去しきれないまま製品にされているのではないかということから危険だと認識されるようになりました。
ですが、それも全くの誤りです。
製品になる時には完全に取り除かれているので、安心して使うことができます。
結論
ここまで見ていただいた方は、サラダ油・キャノーラ油が安全であるということをわかっていただけたかと思います。
要するに、
過剰に摂取するな
これだけです。
日常において普通に使う分には問題ないのです。
なにごとも、過剰は禁物です。
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